語彙力の付け方

 物語の読解にはそれほど語彙は必要ありません。小学生でも芥川

龍之介の短編が読めます。それは、文章の前後から、つまり文脈から

その言葉の意味が類推できるからです。

 一方説明文や論説文はというと、語彙が大きく影響します。

 たとえば、パソコンに明るくない人がパソコン関係の本を読んだと

します。1行に2つも3つも知らない言葉が出てきたのではとても文意は

つかめません。

 では、説明文などを読むための語彙はどうやって身につけるか。

 それは、小中学生向けの文章でよく扱われるテーマ、代表的なものと

しては「言葉」「人生」「自然」「日本」「読書」「人間関係」「社会」、

これらをテーマとした文章を多く読み、文章を通し言葉を獲得するのが

一番です。
 

 簡単な方法を知りたくてここを読んだ皆さん、すみませんでした。

即効性のある方法はありません。読んで身に付けた言葉が語彙となるの

です。

 何を読むのがよいかとなると、中学受験生なら、みくに出版の

「中学入試試験問題集 国語編」。高校受験生なら旺文社の「全国

高校入試問題正解 国語」。この中の説明的文章を時間のある時に

読むのが一番です。

 それでもなお、どうしても楽して語彙をつけたいという方は、

すばる舎から出でいる「語彙力アップ1300 分野別・総まとめ編」を

買うしかないでしょう。これなら質の良い2つの例文を通して語彙を

身につけられることと思います。監修した私が言うのだから間違い

ありません。おっと、PRになってしまいました。

 

漢字の話

 小学生の間は漢字力の差が最も大きい時期です。書けないからと

いってあまり時間をかけるのはムダ。苦手な子ほど忘れるものです。

 塾のテストの前など、国語で確実に点がとれるのは漢字だけだと

ばかりについ時間を費やしますが、ほどほどに。

 高校生になるころには、漢字練習帳に5回ずつ書く、などということを

しなくても書けるようになります。それは日常の中で漢字を見る回数、

経験の総量があるレベルに達して、横棒の数など覚えなくても漢字が

一つの絵のように頭に入るからです。

 「タテ棒、ヨコ棒の数をどうしても間違える」などは本当に苦手な

生徒に見られる傾向です。そういう生徒に詰め込むのは苦行です。成長を

待ってください。

問題文を読むときは

話題をつかめば読解は深まる-2度読みのススメ


まず次の文章を読んでください。

 席についた。ギリギリセーフ。まったく自分でもイヤになる。明日か

らはこの性格はなおさなきゃ、ってムリか。

 仲良しの何人かがぼくのほうを見る。田中がこちらに歩きかけたとき、

担任の加藤先生が入ってきた。今日はスーツ姿だ。

 まだだいじょうぶ、まだまだ時間はある、そう思っているうちにいつも

時間がたってしまうんだ。田中とだって話したいことがいっぱいあったのに。

  加藤先生が出席を取り始めた。… 

 

 ある朝の、どこにでもありそうな場面ですね。とくに難しいところも

心に残るところもないと思います。

 しかし、これを「卒業式の朝」と思ってもう一度読んでください。さあ、

どうでしょう。今度はいろいろと気づくこと、感じ取れることが増えたの

ではないでしょうか。

 「性格を直すのはムリ」…もう明日からはここへは来ない。

 「今日はスーツ姿だ。」…卒業式でかちっとしたスーツで来たのだ。

 「加藤先生が出席を取り始めた。」…いよいよ小学校最後の出席を取り

   始めた!

 このように「何の話なのか」が分かった上で読むと理解は深まるのです。

 もちろん伏線部や先を暗示する表現にも一読して気づくようになったら

2度読みは必要ありません。

 しかし、読みが未熟な小中学生の間は、問題文にさーっと一度目を通した

だけで問いに入るのはよい方法ではありません。2度読むことで読みは深ま

ります。

問題集を使った勉強は

 問題集を使った勉強の際は、採点は出来るだけおうちの方が行ってく

ださい。

 採点の仕方は、はじめはマルつけをするだけで本人に返し、間違った

ところを直させます。2度目はマルつけをしたら答えを本人にわたし、

間違ったところを反省させましょう。

 この勉強は、真剣に積極的に取り組むほど効果があがりますから、

短時間にしましょう。高学年であっても1回の勉強時間は2度の採点と直し

を含めて30分~45分が適当です。

 解く過程が勉強なのですから、採点は甘く、最後の「反省」もあまり

強制せず、次回またがんばろうという気が起こるような形で終わらせて

下さい。

 問題集のレベルとしては、まあ真剣にやって(家庭で100%真剣になれ

る子はめったにいませんから)6~7割とれる程度のものが最適です。

語彙について(2)

 ある日、5年生の授業で「紅一点」について聞いたところ、全員が

「知らない」「聞いたことがない」と答えました。

 そして半年ほどたってから子どもたちに

「あれから『紅一点』という言葉を見たり聞いたりしたか」

とたずねたところ、3人が手をあげました。

 

 特に意識しない限り子どもは知らない言葉は聞き流すし、知らない字は

目に入りません。しかし、一度意識にのぼった言葉には敏感になるのです。

 

 こうして、日常生活の中で、また、読書を通して一つの言葉と数回出会った

時、子どもは言葉を自分のものとします。語彙となるのです。

 

 語彙を増やす第一歩は、50個の言葉を丸暗記することではありません。

会話や読書でたくさんの言葉と出会うことなのです。

漢字の話 (2)

 前回は、漢字がどうしても覚えられないからといって時間をかけ過ぎる

のはよくない、というお話しをしましたが、今回は漢字を覚えるためのお

もしろい練習法をお教えしましょう。

 いつものノートにいつもの鉛筆でいつも通りの大きさで書いても、脳に

焼きつけることはできません。非日常的な練習方法こそ短時間でおぼえる

コツです。

 それは、古新聞に大きく筆で書くという方法です。水でも墨汁でもかま

いません。大胆に大きく書いてください。

 

 苦手な字を集めておいて夏休みなどにやってみてください。