ここでは国語のいろいろな話をしていきます。
表現力・記述力を養うための親子で行う勉強法(1)
「表現力」「記述力」というと何かとってもややこしい勉強が
必要な感じがしますが、実は
「雨が降ってきたので、カサをさした」
この程度の文を書く力さえあれば、あとは簡単な練習で中学入試
で困らないくらいの記述力は付きます。
何回かに分けてその勉強法をお教えします。
まずは その(1)
読みやすい文を書こう。
人がひとつの情報を伝えようとすると(あることを言おうとすると)
平均して15字±5字ぐらいになります。この15字程度の分かりやすい
短文さえ書けるようになれば、30~40字の筋の通った文を書くことは
たいして難しいことではありません。
練習方法・問題作り
文を構成している単語を取り出して与え、文を作らせる練習です。
保護者の方が20字以内の短文を作り、語順を変え、助詞を取るなど
して次の例のような語の列を作り、文を作らせて下さい。
例… 来た 男の 背の高い こっち 人
本 おもしろい とても この 思いました
この練習で、正しく助詞を用いること、正しい語順で書くことを
学ばせます。たとえば「男の背の高い人」ではなく「背の高い男の
人」が正しいというように。
小学1.2年生で作文が苦手な子の場合は、簡単な4語文から始める
とよいでしょう。
例…けんかを お兄ちゃん した きのう
お父さん、お母さん、ガンバって問題を作ってください。
次回は今回の勉強で作った短文を2つつないで話の筋道のある
30字~40字の文を作る勉強法をお話しします。
表現力・記述力を養うための親子で行う勉強法(2)
今回は表現力・記述力をつける勉強法その(2)として話の筋道の
ある30字程度の文を書く勉強法をお教えします。
2つの文をつないで1つにする練習
例題1.急に激しい雨が降ってきた。だから私はあわててカサを
取り出した。
これは「順接」というつなぎ方です。これを1つの文にすると
-急に激しい雨が降ってきたので、私はあわててカサを
取り出した。
となりますね。
例題2.急に激しい雨が降ってきた。しかし、私はあいにくカサを
持っていなかった。
これは「逆接」です。1つの文にすると
-急に激しい雨が降ってきたが、私はあいにくカサを持って
いなかった。
例題3.急に激しい雨が降ってきた。また、風も強くなってきた。
今度は「並立・添加」と呼ばれる関係になっています。1文にすると
-急に激しい雨が降ってきたし、風も強くなってきた。
例題4.急に激しい雨が降ってきた。なぜなら、台風が上陸したからだ。
「説明」という関係になっています。これをつなぐと
-急に激しい雨が降ってきたのは、台風が上陸したからだ。
となります。
これらの例題を参考にして、保護者の方が2つの文を作り、それを
お子さまが1文につなぐという練習をしてください。
筋の通った30字~40字の文がすらすら書けるようになります。
与えられた文の続きを考えて書く練習
例題1.授業中に隣の席の太郎が話しかけてきたので…
例題2.今日学校から帰ってきたら…
この続きを自分で考えて1つの文を書き上げる練習です。
1文で完結すること、出来れば全体で30字~40字ぐらいの長さになる
ようにすることを心がけてください。
作文に対する苦手意識がなくなり、記述式の長い答えを書くことも
抵抗がなくなってきます。
表現力・記述力を養うための親子で行う勉強法(1)と(2)、
ぜひ続けてみてください。
読書について-本が苦手な子の場合
本が苦手な子に読ませるのは一苦労です。
しかし、方法がないわけではありません。次にいくつかの方法を
書きますので試してみてください。
(1)保護者の方が、読ませたい本のあらすじを話して聞かせましょう。
意外なことに子どもたちは結末を知ってしまった方が読み始める
傾向が見られます。
(2)その本が映画化されていれば、先に映画を見てから本に進むのも
よい手です。
(3)読みやすい本から始めるのも効果的です。内藤ゼミでは本ギライ
の子には星新一さんの本をすすめます。これは人気があります。
(4)星新一さんの本でさえ「読みたくない!」という手強い相手には、
最後の手です。マンガをすすめましょう。
マンガは読書ではないと思われるかもしれませんが、擬似体験をし、
人間の様々な喜怒哀楽に触れ、コマとコマとの間の描かれていない
部分をイメージ化する…こういった点では読書に近い効果が得ら
れます。
ただ、注意していただきたいのは読書の代わりとなるよいマンガを
すすめるということです。
内藤ゼミでは「はだしのゲン」中沢啓治/「キャプテン」ちぱあき
お/「ブラックジャック」手塚治虫などをすすめています。
読書について-本を読む子の場合
読書に関する質問でよく聞かれるのが
「うちの子は読むのがとても速いのですが、ちゃんと読んでいるの
か心配」
-大丈夫です。本好きの子は読むのが速い子が多いのです。興味
あるところはややゆっくり、そうでないところはあっさり読み進
めます。教材ではなく趣味で読んでいる本ならそれで結構です。
「何冊もの本を同時に読んでいるのだが」
-大人も連続ドラマを毎週いくつか並行してみることはあります。
別に話が混乱しませんよね。
「本を中途で投げ出してしまう」
-全部投げ出すのは困りますが、合わないと思ったらやめるのは
当然。時間のムダですから。
「好きなジャンルの本しか読まない」
-これは対処が難しい。趣味ですからあまり厳しくは言いたくない
ですよね。しかし、国語力に繋がる読書をさせたいという下心を
持つ親や教師としてはいろんな本に目を向けさせたい。
そこで、薦めたい本のストーリーを言ってしまうという手があり
ます。子どもたちはストーリーが分かると安心して読むという傾向
があります。試してみてください。
接続詞に注意して(2)
「そして」はくせもの。
接続詞の問題で気をつけてもらいたいのが「そして」です。次の
例を見てください。
(1)うちのお母さんは料理が得意だ。( )、編み物もうまい。
(2)急に雨が降ってきた。( )、運動会は中止になった。
(3)誰だって少年のころ、( )、少女のころは自分が親に
大切にされていることに気づきません。
答えは上から順に、「また・しかも」「だから・そこで」「ある
いは」などが考えられます。しかし、この3つの( )のすべてに
「そして」は違和感なく入ってしまいます。
本来「だから」をいれるべきところに「そして」をいれてしまった
としたら、そしてまちがいに気づかなかったとしたら…。大きな失点と
なります。
接続詞の空欄補充問題のとき、「そして」は最後に入れるように。
具体と抽象の学習
「具体と抽象」というと、とても難しい感じがしますが、子どもたち
にはこの授業はおもしろいものです。
今までは5年生以上に教えていたのですが、今年初めて4年生にも
教えることにしました。
<例題> 抽象→具体
食品 → 洋菓子 → ? 解答 ババロア・チョコレートなど
では問題です
① 生きもの → 犬 → ?
今度は逆のパターンですよ。具体→抽象です。
② 新幹線 → 電車 → ?
解答例 ①-チワワ・ブルドッグなど または 愛玩犬・使役犬など
②-交通機関・乗り物など
次は文で 抽象→具体 を考えてみましょう。
<例題> 抽象→具体
よいことをした。 → ??? 解答 お年寄りに席をゆずった。など
では問題
ラッキーなことがあった。 → ???
さあ、どんなことを書いたでしょうか。
解答例 ガリガリ君を買ったら当たりが出た。など
説明的文章の大切な部分は、すべて抽象表現の個所なのです。具体と
抽象が理解できた子は説明文、論説文の読みが格段に良くなります。
記述問題の「 線部をわかりやすく説明しなさい」という問題や、
「 線部と同じ内容の部分を書きぬきなさい」という問題も、この
具体と抽象が分かっていれば、ぐんと楽になります。
ぜひご家庭で練習してください。
ことばをあやつる練習-文章力の基礎作り
うちのゼミの子どもたちが喜んで取り組む作文の基礎練習です。
【例】お父さんは駅前のおそば屋さんでたぬきそばを食べた。
この文から「お父さん」を説明する修飾句を作るのです。
→駅前のおそば屋さんでたぬきそばを食べたお父さん
では、次は「おそば屋さん」で終わるようにしてみましょう。
→お父さんがたぬきそばを食べた駅前のおそば屋さん
もう一つ、今度は「たぬきそば」で終わってみましょう。
→お父さんが駅前のおそば屋さんで食べたたぬきそば
初めは3~5語文ぐらいでやります。
【例】私は新しいくつを買ってもらった。
→「くつ」「わたし」で終わるように。
太郎は海岸でいじめられていたカメを助けた。
→「海岸」「カメ」で終わるように。
時間があったらご家庭でやってみてください。年長さんから
小学校高学年まで勉強になりますよ。慣れてくれば30字ぐらいの文
でも出来るようになるでしょう。
この練習によって、頭の中で語句の並べ替えが速くできるようになり、
短期記憶の力も付きます。作文の時に「こう書こうかな? それとも
このほうがいいかな?」と今までより長い文を頭の中に思い浮かべ推敲
できるようになるのです。
進学塾のテスト時間は短すぎる!
大手進学塾のテスト時間は短すぎます。生徒に恥ずかしくない点を取
ろうと丁寧に取り組めば私が解いても足りないでしょう。
ではなぜ短くするのでしょうか。
それは同点の者が多くなるのを避けるためです。「能力」だけでなく
「時間」という要素もテストに加えることで、偏差値50を中心になだら
かな正規分布が生まれ、評価もクラス分けもやりやすくなります。
さらに、時間が短ければ生徒たちはおしゃべりもイタズラもせず、ひ
たすら問題に取り組みますから監督するほうはとても楽です。
こんなわけで短いテスト時間が当たり前となりました。
しかしその結果、文章をななめ読みし、手間のかかる記述問題は飛ばし
選択問題を優先し、考え直すよりは1題でも多く手をつけようとする…
こういう生徒を大量生産してしまいました。
お金を払って悪い解き方を身につけているようなものです。これは
問題です。
かといってじっくり取り組んでしまうと多くの問題をやり残すことに
なり、点数的には不利です。クラスが落ちるかもしれません。
ではどうすべきか。
結論としては、塾では急ぐ。そして家庭では、特に6年生が過去問を解く
ときは時間一杯を使って問題文は2度読みし(なぜ2度読みするとよいか-
これについてはこのコーナーの「問題文を読むときは」を読んでください)
じっくり考えて、塾で身に付いた急ぎ過ぎるクセを直す。これしかありま
せん。
塾のテストで時間が足りなくて困っているみなさん、実際の中学受験の
国語問題はそれほど短い時間ではありません。あせらなくてよいのですよ。
読解力を養うための親子で行う勉強法
《教材・指導方法》
教材は物語文を用います。あまり本に慣れていない場合や、
読解力にやや不安がある場合以外は上級向けのものを選ぶのが
よいでしょう。
短編の物が使いやすいようです。
指導するかたは、大人のかたであればどなたでもけっこうです。
週1~2回、1回に15分~30分程度が適当でしょう。
指導方法はまず、指導するかたが先に教材を読んで質問の場所を
用意し(質問の作り方は後で述べます)、子どもに文章を音読させ、
質問の箇所まで来たら文末で音読をストップし問いかけるという
やり方です。
これを繰り返していくわけですが、問いによっては先まで読ま
なければ答えられないときもあります。そういうときもあまり先
まで読ませずに、必要最小限を読ませるようにして下さい。
物語の冒頭部分は問いを多くして、場面、人物の性格、環境、
人間関係などいろいろと考える習慣を付けてください。ストーリーが
はっきりしてきたら問いは1ページに1つ2つでもよいと思います。
《指導上の注意》
文章中で用いられた熟語や慣用句は、読解に必要な最小限を教える
ように心がけて下さい。「せっかくだから」とばかりに欲ばると読解の
妨げになることもあります。
答えがひとつに絞れないとき、いつかの答えが考えられるときは、
考え付くかぎり言わせてみるとよいでしょう。深く考えること、
ちがう視点をもつことの練習になり、とてもよい勉強になります。
正解を教えずに先へ読み進み、それがわかるところへ来たときに気付
かせるようにして下さい。
作問はなかなか難しいものです。初めのうちは良い問いを作ろうと
せずに、物語を通して対話するつもりで行って下さい。「『これ』は
何を指しているかな?」「なぜ~したのかな?」「このときはどんな
気持ちだったと思う?」「この人、どんな人?」「次はどうなると思う?」
「ここを読むとどんなことがわかる?」こんな問いかけで十分読解力を
養えます。
ぜひ試してみてください。
接続詞に注意して
次の文章中の( )に適当な接続詞を入れなさい―といわれたら何を
入れますか。
・あの大学はユニークな講義で有名だ。( )、志望者も多く、倍率も高い。
一番に思いつくのは「だから」ではないでしょうか。しかし、大学選び
をしている受験生のセリフと考えると、「しかし」も入りますね。
このように接続詞の問題はその前後だけを読んで軽く考えるとミスを
することがあります。その文章が何を言おうとしているのかをしっかり
つかんだ上で決めましょう。